データのラベル付けを支えるつながりをたどる
ブラウン大学の学部生が、人工知能システム向けのデータ準備に携わる企業や労働者の一部をたどる対話型の地図を作成した。このプロジェクトは、データのラベル付けを行う13社と141の顧客企業、31カ国に広がる労働者の拠点を結び、調査が難しいことの多いサプライチェーンを一般に見える形にしている。
ブラウン大学の最終学年の学生で、同大学のCenter for Technological Responsibility, Reimagination and Redesignと協力するCunyan Ma氏は、既存のデータ労働者のデータベース、報道、ラベル付け企業の業務拠点に関する独自調査を基に、このツールを構築した。これらの拠点は労働者の所在地を推し量るための指標であり、個々の仕事を漏れなく数えたものではない。Ma氏は、この地図は全体を網羅するものではなく、実態の一端を示すものだと説明している。
データ労働者は、AIシステムの学習や評価を助ける作業を担う。画像内の物体の識別、品詞のタグ付け、録音の文字起こし、チャットボットの回答の評価、医療用スキャン画像の境界の指定などが、その仕事に含まれる。安全対策の作業では、フィルタリングすべきコンテンツをシステムが認識できるよう学習させるため、人が精神的な負担を伴う文章や画像を確認しなければならないこともある。
この地図は、テクノロジー企業が専門のラベル付け企業に業務を委託し、その企業が人件費の低い労働市場で働き手を集めるという、よく見られる仕組みを示すことを目的としている。Ma氏は、グローバルサウスの国々から、ほかの地域の企業や消費者のために困難で低賃金の労働を引き出す構造を「AI植民地主義」と呼ぶ。この可視化は、AIを完全に自動化された製品とみなすのではなく、顧客、仲介企業、所在地のつながりを通して、その主張を提示している。
一般の理解を助け、拡張の余地を残すツール
Ma氏によると、当面の目標は、AIサービスの下にある経済的・政治的な構造を、学生や一般の人々が分かりやすく理解できるようにすることだ。ブラウン大学のコンピューター科学教授でMa氏の指導教員を務めるスレシュ・ヴェンカタスブラマニアン氏は、AIを構築するために積み重ねられた人間の労力を強調することで、AIを独立した知性として描く説明に対抗する助けになると述べた。
このプロジェクトは、労働者にとって実用的な価値を持つ可能性もある。ラベル付けの仕事は雇用主や国をまたいで分散しているため、労働者は同じサプライチェーンの別の場所で誰が同様の作業をしているのか、ほとんど把握できない場合がある。Ma氏は、将来の版で労働者同士がお互いを見つけられるようにしたいと考えている。ただし、それは現時点では目標であり、現在の地図の機能でも、確認された成果でもない。
Ma氏はデータを拡充し、半導体産業の労働など、コンピューティングを物理的に支えるほかの基盤も探る計画だ。そうした拡張においても、現在のプロジェクトと同じ透明性の問題に直面することになる。外部委託の連鎖は変化し、企業間の関係は不透明な場合があり、業務拠点の所在地だけではすべての労働者や雇用条件は分からない。
したがって、この地図の現時点での意義は、情報を整理した出発点を提供することにある。掲載された数値を、世界のデータ労働の全規模を示すものと受け取るべきではない。数値は、可視化できた一群の関係を記録し、日常的なAI製品に組み込まれた人間の判断を誰が提供しているのかを問うための道具を、研究者、労働者、利用者に提供している。



