量子力学は、観測されていない物体が通常の空間内でただ一つの確定した経路をたどるとは記述しない。代わりに、起こり得る測定結果を組み合わせた状態をその物体に割り当てる。物理学者はこの状態を、ヒルベルト空間と呼ばれる抽象的な数学の空間内のベクトルで表す。ジョン・フォン・ノイマンの仕事を通じて、この枠組みは理論の中心を占めるようになった。

共通の枠組みが必要になったのは1920年代だった。ヴェルナー・ハイゼンベルクは1925年に行列力学を導入し、数を配列したものを用いて、電子が原子のエネルギー準位の間を移るといった遷移を計算した。続いてエルヴィン・シュレーディンガーは1926年に波動力学を発表し、波を通じて確率を記述した。二つの方法は根本的に異なるように見えたが、同じ予測を導き出した。

数学者ダフィット・ヒルベルトの影響を受け、ポール・ディラックの考えを発展させたフォン・ノイマンは、その理由を示した。この23歳の数学者は、1927年に発表した3本の論文で、量子論の主要な対象と規則を定義した。異なる数式表現で同じ点を特定できるのと同じように、ハイゼンベルクの数の構造とシュレーディンガーの波は、同一の量子状態を別の形で表したものだと明らかにした。

この定式化では、状態はヒルベルト空間内である方向を向くベクトルであり、矢印として思い描かれることも多い。その方向は部屋の中の位置に対応するのではなく、起こり得る結果を表す。結果が赤、黄、緑のいずれかになる仮想的な量子信号機なら、それぞれの色に1本ずつ軸を割り当てた3次元のヒルベルト空間でモデル化できる。測定前のベクトルは軸と軸の間を向くことができ、複数の可能性の混合と、それぞれの結果に対応する確率を符号化している。

標準的な説明では、ベクトルは二つの異なる仕方で変化する。観測前には、相互作用によってヒルベルト空間内を滑らかに、予測可能な形で回転する。測定時には、いずれかの結果の軸へとランダムに瞬時に移り、それまでの方向が各結果の確率を決める。例えば結果が緑なら、新しい状態は緑の軸にそろい、直後に同じ測定を繰り返すと必ず緑になる。

空間の大きさは系によって異なる。基底となる二つの結果を取り得る量子ビット、すなわちキュービットには、2次元のヒルベルト空間を使う。どこにでも見つかり得る粒子には、無限個の次元が必要となる。どの軸を選ぶかは、考えている測定によって変えられる。根底にあるベクトルが状態そのものであり、座標系はその状態について特定の問いを立てるための方法なのである。

この抽象化は、競合する方程式を整理しただけではなかった。量子状態、その時間発展、測定を、一貫した規則の下で表現できる統一的な言語を確立した。この枠組みによって、物理学者は数学的な定式化を一つ一つ別の理論として扱うことなく、実験で得られる具体的な確率を計算できる。

ヒルベルト空間が物理的な直感から遠く感じられるのは、まさに通常の位置ではなく可能性を追うからだ。その隔たりこそが強みでもある。粒子が隠れた軌道をたどるという想像から、許されるすべての結果を含むベクトルへと視点を移すことで、フォン・ノイマンは量子力学に数学的な構造を与えた。その構造は今も、量子論と量子情報を体系づけるために使われている。