郵便を中心に組み立てられたデジタルアプリ

9月26日に公開された回顧記事が、サービス開始から15年となるAppleのCardsアプリについて、その背後にあった製造設備を詳しく紹介した。Cardsは2011年に登場したiPhone向けのツールで、利用者が写真やメッセージを添えてオリジナルのグリーティングカードをデザインすると、完成品が印刷され、相手に郵送される仕組みだった。この回想によると、製品の立ち上げを主導したのは、人生最後の年を迎えていたスティーブ・ジョブズだった。

このアプリを成立させるには、ソフトウェアだけでは到底足りなかった。Appleは、綿を原料とする用紙に、深い凹みが残る活版印刷で図柄を施し、顧客の写真はデジタル印刷で加えることを求めた。Appleの印刷・発送業務を担う提携企業の元プログラムマネージャーは、この組み合わせには技術的な難しさがあったと説明している。選ばれた用紙にはインクが定着しにくく、活版印刷には、ニューヨーク州北部の専門業者が修復済みのハイデルベルク製印刷機を供給した。

Appleはさらに、米国と欧州の双方でサービスを提供したいと考えていた。そのため、iPhotoですでに提供していたデザインを単に再利用するのではなく、新しいカードのデザイン、印刷用テンプレート、生産ラインが必要になった。提携企業はそれ以前から、iPhotoのフォトブック、カレンダー、カードの大きな季節需要に対応しており、事業はチェコや日本にも及んでいた。Cardsは、2011年10月の開始に向け、社内で「Speed Racer」と呼ばれる、厳しい日程の新たなプロジェクトを加えることになった。

郵便の細部まで技術的な要件に

実物の封筒も製品デザインの一部として扱われた。この回想によると、Appleは配送経路の仕分け用バーコードが目に見えることを望まなかった一方、郵便システム内での配送状況は追跡できることを期待していた。その結果、紫外線を当てると見えるバーコードを使う工程が生まれた。米国郵便公社は複数の段階で郵便物を読み取ったが、通常の目に見えるコードがないため、手作業での取り扱いがより多く必要になった。

Appleはまた、印刷会社が郵便料金の表示を直接印刷することも認めなかった。米国では、Cardsの郵便物に、このサービス用にデザインした特注のハート形切手を使用した。チェコの郵便事業者は同じ方式を認めなかったため、Appleは現地では既存の切手を選んだ。こうした選択によって、一見ささいな美観上の判断が、物流上の追加作業につながった。

元プログラムマネージャーによると、各チームはサービス開始までに仕分け、バーコード、印刷の設備を設置しようと急ピッチで作業を進め、Appleのエンジニアも現地を訪れ、一部のスタッフは職場で寝泊まりした。この回想は公式なAppleの歴史ではなく、参加者の一人による証言だが、携帯電話でカードを作れば、あとはAppleが実物の製作から配送まですべて引き受けるという、消費者へのシンプルな約束の裏に隠れた運用上の負担を示している。したがってCardsが残したものは、長く使われるアプリというよりも、iPhone上の操作を誰かの郵便受けに届くものへとつなげるために組み上げられた、並外れて複雑な印刷・郵便システムにある。